人月見積りについて(その2)                                2012年1月29日

前回の人月見積りの続きです。 

人月という文字通り、1(の月単価)×でしか見積もれないのがIT業界なのです。 例えば製造業であれば、原価ベースで材料費が概ね決まっていますので、それに加工に伴う人件費を入れても、販売価格にはあまり大きく上乗せすることは出来ません。そうすると競争に勝てないので、技術的な付加価値を付けようとします。つまり、人件費一辺倒ではありません。 

翻ってIT業界では、システム開発コストの大半は人件費です。経営者にとって、一番気になる経費の一つがその人件費で、これは会社の収益状態に関係なく毎月支払う固定費ですので、儲からないときは減らすというわけには行きません。 

以前は、大手元請会社が開発リスクを背負って受注しておりましたが、バブル以降の経済環境の悪化による収益低下により、自社開発は難しくなり、代わって大幅に外注化(アウトソーシング化)を進めて来ました。本来なら、足りない労働力は社員を当てるべきですが、正社員第一主義による人材不足もあって、そうもいかずその分を外注化して固定費を抑えるわけです。所謂(いわゆる)、人件費の変動化です。

その結果、IT業界の下請構造は一層深化(進化?)したと云えるでしょう。自社の利益(リスク込)を確保して、残りは下請に発注するわけで、しかも予算やスケジュールや仕事の中身についてもアバウトな状態のままで、とにかく技術者を割り当てるのが求められます。そうなれば技術者の紹介を生業(なりわい)にする中間搾取業者が発生するのは、当然な成り行きでしょう。

そういうIT業界では、人月見積りのほうが取引実態や経営戦略に沿った見積り方法として、受入れられているのではないでしょうか。

ただ、これはIT業界だけの問題ではなく、ユーザ側にも問題があるような気がします。何故なら、開発予算を計上し、それを執行するユーザ側が業界の価格決定構造に疑問を持っていたら、沈黙している筈がないからです。 ユーザ側は何故、業界に対して具体的な改善策を求めないのでしょうか・・・数十年、この業界で寄食してますが寡聞にして知りません。

察するに、開発要件のテンコ盛りから、システムの保守・運用への過剰要求など、 ユーザ側も予算以上のものを求め、業界側もそれを受入れて来た経緯があるからではないでしょうか。 そういった、なあなあの関係を人月見積りに押し込んで来たのでは・・・。

「新しい酒は新しい革袋に盛れ」という諺があります。

新しい見積り方法は、刷新されたIT業界にこそ相応しいのではないだろうか。

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